OBの戯言

今だから考えるFC町田ゼルビア改名問題

こちらではご無沙汰しております。
なんかブーイングの話の流れで過去の歴史とか考え方とか一度、整理した方がいいかなと思って筆をとりました。

その話の前提として、2つの件について話しておかないといけないかなと思っています。

1つは「プロスポーツビジネスと普通のビジネスの違い」についてです。

以前に書いた通り、私は東京大学運動会主催のスポーツマネジメントスクールの1期生として多くのことを学ばせてもらいました。

そこで習ったことの一つを紹介します。もう20年も前の話なので正確に覚えているか不安ですが、書いてみます。

プロスポーツビジネスには多くのステークホルダー(利害関係人)が存在し、それらが互いに複雑に関係しあっているのが特徴です。

親会社(株主)、スポンサー、ファン、サポーター、地元行政、施設管理者、リーグ、国内外の競技団体(サッカーで言うとFIFAとかJFAとか)、対戦相手などです。

この種類の多さが、スポーツビジネスの特徴の一つとなっています。

Jリーグクラブにとって、「Game」という「興行」を行うことが商売(ビジネス)なわけですが、この「Game」という売り物は自社だけでは作ることができません。

ゼルビアで言えば、試合会場は町田市の所有物です。多くの市民が税金を払って建てた施設で、これが無いと試合を行うことができません。

また数多くのスポンサーやファン、サポーターからの収入が無ければ、その興行を継続することはできないわけです。

そして「Game」は自分のチームだけで行うことはできません。対戦相手が必要です。
そこにはリーグがあり、ルールがあり、審判がいて初めて成立します。

つまり何が言いたいかというと「自分たちだけではビジネスが成立しない」ということです。

普通、一般の企業であれば、その企業は誰のものかと聞かれれば、それは「株主のもの」となるのが普通だと思います。
しかし、スポーツクラブ特にJリーグクラブの場合は「クラブは地域全体の所有物」という意識が大切になってくる。そう思います。それがプロスポーツビジネスの特異性の一つです。

 

もう一つの特異性は、そんなステークホルダーの一つである、ファン、サポーターの存在です。「プランド変更障壁の高さ」になります。

例えば、毎日使っている歯磨き粉が販売停止になったとします。
この時に「この歯磨き粉じゃないと私、絶対ヤダ。もう死んじゃう」という話にはならないですよね笑

車とかだと、どうしてもトヨタじゃないと嫌だという人はいるかもしれませんが。

基本的にどの製品であっても、「このブランドじゃないとダメ」ということはなかなか無いように思います。

ところが、プロスポーツビジネスの場合はどうでしょうか。

仮に、そんなことは無いと思いますが、ゼルビアが無くなります!となったら、あなたはマリノスやヴェルディ応援できますか?
かなりの割合の方が、少なくとも一般の商品に比べれば「できない」と答えるのではないでしょうか。

このブランドを変更する障壁の高さ、がプロスポーツビジネスの一つの特徴、特異性と言っていいと思います。

故に、プロスポーツクラブを経営する者が一番に考えなければならないことは、

昇格すること

でも

優勝すること

でも

世界に打って出ること

でもありません。

それは、「潰さないこと」だと私は思います。

ファン、サポーターにとって、応援するクラブとは自分そのものであり、自分の体の一部であり、人生そのものです。
それが無くなるということは、つまりファン、サポーターにとっては「死ぬこと」と同じことになります。

ですから、クラブを経営するものは絶対に潰してはいけないのです。

 

そういう意味で、FC町田ゼルビアの名前を変えるという話はクラブの歴史上の汚点として残ることになった。

ゼルビアという名前は、ご存じの方も多いと思うが、町田市の木である欅(ゼルコヴァ)と町田市の花のサルビアを合わせた造語で、お亡くなりになった重田先生が命名した町田のサッカークラブにとって最高最適な名前です。

地域の為と言い運営をしておきながら、その名前を変えるという判断は、理由はともあれ愚策であった。これはハッキリと言って良いと思います。

名前を変えるということはクラブが無くなるということと同じ意味になります。
到底、サポーターには受け入れがたいものでしょう。

その辺の認識の甘さがゼルビアの旧経営陣にはあった。

しかしCA藤田社長の素晴らしいところは、その判断をスパっと変更できるところでした。
応援してくれるファン、サポーターが喜んでくれないのなら、やる必要が無いと自身の判断を変える柔軟性、これはなかなかできることではないと思います。

よい経営者に買ってもらったと思います。

話が長くなりましたが、何が言いたいかというと、クラブを無くしてはいけないよということ。簡単にブランドを変更することができない人たちがいることを忘れてはいけないということです。

これはブーイングの話に続いていきます。(続)